そうだ、美術館へ行こう! 〜水玉の愛の宇宙へ③
1957年 草間彌生さんは28歳でアメリカに渡ります。
第一回目の《そうだ、美術館へ行こう!》で篠田桃紅さんの展示について書きましたが、
篠田桃紅さんも43歳(1956年)に一人でボストンへ渡っています。
二人の渡米はほんとに同時代です。
1960年代の前衛芸術の文化のなかで、二人の日本人の女性がアメリカにもたらした
インパクトは凄いものです。
お二人の展示を立て続けに観てきて、僕はそのお二人のパワーに圧倒されてしまいます。
凄い!…としか言いようがありません。
草間彌生さんもアメリカで簡単に成功したわけではありません。
貧乏生活の中で必死に絵を描いて描いて描きまくって、自殺願望とも戦って手にした勝利です。
その表現は、あのアンディー・ウォーホルにまで大きな影響を与えました。
美術館の展示の中では、どんどん凄い作品が登場します。
鏡やシャンデリアを使って永遠に広がる宇宙のような空間を表現したもの。
家具が置いてある部屋のような空間にブラックライトを当てて、
カラフルな水玉が無数に輝く空間。
その中でも特に、究極の草間彌生の世界(いや、宇宙)を感じた作品があります。
《南瓜へのつきることのない愛のすべて》という作品です。
小さなミラールームの中に、5名程度で入ります。
黄色に黒の水玉模様の南瓜が輝き、それが鏡の反射の中で無限に無数にどこまでも
広がっていきます。
それが本当に美しく永遠に広がる「南瓜の銀河」なのです。
彌生さんの自伝を読みますと、彌生さんにとって南瓜は「私の人生の伴侶」だそうです。
〈南瓜を胸に抱きしめると、遠い子供時代のことを思い出します。
私は南瓜にどれだけ救われたことでしょう。
苦しかった日々、南瓜は私の心をなぐさめてくれたのです。〉
(『水玉の履歴書』草間彌生著/集英社新書 より引用)
これほどまでに愛すべき存在の南瓜。
水玉も南瓜もどこまでも増殖して宇宙の星のように輝いていきます。
生命が無限に広がっていく感じがします。
しかも強い愛着もしっかり。
これはなんと言いますか、すごく心に響く感動的な芸術作品です。
「私の愛のすべて」…なるほど、です。
皆様もぜひ、草間彌生さんの愛の宇宙を感じてみてください。
おすすめいたします。
夏真っ盛りの松本市です。ご自愛ください!